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「アールグレイ……ミルクティか……。なるほど」
花木田君がまじめな顔でうなづいている。
「あの、ただの私の好みなので。クッキーは本当においしいです。美味しさで言えば昨日のと引けをとりません。ありがとうと伝えてください」
嘘じゃないと見せるためにクッキーをもう一枚食べる。
ああ、幸せ。ベルガモットの香りに包まれると、なんだか執事が横に立っているような優雅な気持ちになるわよね。まぁ、実際に立っているのは執事というよりは王子的な人だけども。
「ほんとうに、幸せそうな顔をして食べるんだね?」
「幸せそうじゃなくて、間違いなく幸せ」
横に王子が立っていたって、美味しいものを目の前にすれば、存在はかすんじゃうわ。
気が付いたら、花木田君の存在を忘れ、2枚、3枚と食べ進めてしまった。
「おっと、生徒会の仕事があったんだ。じゃあ、またね!」
と、声をかけられて、窓の外にまだいたことを思い出す。
「え?あー、クッキーありがとう」
立ち去る花木田君の背中に声をかけると、振り返って手を上げた。
またね?
いえ、もう関わることはないよね?
というか、ちょっとクラスの女子の視線が痛い。えーっと……食べよう。うん。クッキー美味しいし。
「このクッキー、誰が作ってるんだろう」
ななみんが一つつまんで口に入れる。
「昨日の今日でお礼を受け取って持ってくるなんて、花木田俊哉は昨日あれから美優の言葉を伝えたってことでしょ?それで、今日花木田に渡したってことだよね?ずいぶん頻繁に顔を合わせる人間ってことになるよね?」
そう言われればそうだ。
「幼馴染とか?」
「いたかな、花木田俊哉に」
「じゃあ生徒会メンバーとか?」
ななみんがうんと頷いた。
「可能性は高いわね」
生徒会メンバーの顔を思い浮かべる。5人のメンバーのうち、書記が3年女子で、会計が1年女子だったはずだ。二人とも、男子生徒に人気が高い主人公系な人間。
お菓子を作りそうなのは1年女子のほうかな?
「天は二物どころか、何物も与えるね~。かわいくて賢くてお菓子作りもうまいのかぁ」
ななみんの言葉に大きく頷く。
モブには一物も与えられないというのにねぇ。
でも……。
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