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「本当においしい。幸せ~。口に含むとほろりと崩れるこの感じ。ベルガモットの香りたまんない。バターよりも軽い植物油が使われているからか、重たくなくていくらだって食べられそう」
「いや、だから、太るよ」
「私の体に幸せが増えていく」
ななみんがあきれたように息を吐き出した。
「ほんっとに、幸せそうな顔して……。太るって言われて笑う女子なんて他にいないよ」
「食べ比べて感想を聞かせてほしいんだけど」
次の日の昼休みにも、花木田君は現れた。
「……」
なんと、今日は教室の中に入って、私とななみんの座る机に椅子を持ってきて座ってしまった。
女子の目が……いつにもまして痛い。
机の上には、5枚ずつ入ったクッキーの袋が3つ。
いったい、なんでこんなことに……と、思いつつも。花木田君が持ってくるクッキーのおいしさは折り紙付きなので、遠慮なくいただくことにする。
一つ目の袋のクッキー。
「あ、なるほど。昨日私が行った、ミルク感が足されてる」
思わず顔がほころぶ。
ベルガモットとほんのりミルクの香りが口の中で混ざり合い鼻に抜ける。
昨日のクッキーに比べて格段に私好みだ。おいしい。
「美味しいって顏だ。うん、成功かな」
よしっと、花木田君がこぶしを握り締めた。
二つ目の袋のクッキー。
「ん、これは……1つ目は牛乳を使ったのかな、2つ目のこれは生クリームで、より濃厚なミルク感」
コクも深まってる。これはこれで美味しい。
「三つめは練乳?」
花木田君が頷く。
「全部正解。良く分かるね。すごいな美優ちゃん……。で、どれが一番おいしかった?」
花木田君の質問に笑顔で返す。
「どれもおいしかった」
正直にそう答えるとがっかりした顔を見せる。
「もしかして迷惑?クッキーの食べ比べなんてさせられて……ごめん」
ちょっと落ち込んだような顔ををして頭を下げた。
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