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「ち、違うんです、その、本当に全部美味しかったです。あーっと、そうですね、紅茶のクッキーというのであれば、1つ目の牛乳を使ったものが一番です。アールグレイのクッキーとしてとても楽しめると思います。二つ目はミルク感が強くなりすぎて、紅茶のクッキーではなくミルクティーのクッキーでしょうか。三つ目は、甘さ控えめという部分が覆ってしまって、まるで別物という印象です。それぞれ別の視点で全部が美味しかったです」
花木田君が、うつむき加減だった顔を勢いよく上げた。
キラキラと輝く目で私を見てる。
砂糖顏イケメンと言われるだけあって、無邪気に喜ぶ顔を思わずかわいいと思ってしまった。
「そっか、紅茶のクッキーとミルクティーのクッキー、それに甘い別物のクッキーか。言われてみればそうかも。全部美味しいというのは……そういうことか……本当に、全部美味しかったんだ。そっか」
満足そうに笑ってから立ち上がった花木田君は椅子をもとに戻した。
「ありがとう。生徒会の仕事があるから行くね」
手を振って立ち去る姿を目で追う。
私の言ったクッキーの感想を、生徒会の……クッキーを作った子に伝えに行ったのかな?
「生徒会も仕事が多くて大変だよね」
ななみんの言葉にハッとする。
「そ、そうだね……」
生徒会室に行くのは、仕事のために決まってるよね。何考えてるんだろう。
放課後に、恐れていたことが起きた。
「間山さん、ちょっといいかしら?」
あーあ。そうだよね。やっぱりそうなるよね……。
同じクラスの子2人に、別のクラスの子4人。連れていかれた中庭で、6人の女子に囲まれる。
「デブのくせして、生意気なのよ」
ぽっちゃりだと思っているけれど、そうだよね。デブって罵られるよね。まぁ、別に傷つきはしないけれど。
「あんたみたいな最下層が俊哉様と話をするなんて許せないわ」
最下層という言葉にも傷つきはしない。
スクールカーストというくだらない順位付けをする人たちが幸せそうに見えたことがないからだ。
いつ、仲間外れにして上位組から落ちるかとびくびくしている姿。
暗黙のルールに目いっぱい縛られ、楽しいふりをして過ごす姿。
流行に乗り遅れたすぐに立場が悪くなるからと、常に金をかけて流行を追う姿。
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