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失言したらどうしよう、ボスに嫌われたらどうしよう、誘いは断れない、断ったが最後人生が終わるくらいの姿。
どうせ卒業してしまえば新しい人間関係ができて終わるだろうに……。
仲がいい友達が一人か二人いればそれで十分。
だから、最下層と言われても全然平気なんだけれど。
「あんたみたいな豚にも俊哉様は優しいけど、勘違いするんじゃないわよ!」
どんっと、肩を強く押される。
「そうよ。女として扱われてるわけじゃないんだからね?」
「そうそう、ペットの豚に餌をあげているつもりなのよ、俊哉様」
餌?
「ほーら、餌がが欲しかったらブヒブヒないて御覧なさいよ!」
鞄を奪われ、昼間に食べ残したクッキーの袋をとられた。
「ほーら、大事な餌がほしけりゃ土下座して謝りなさいよ!」
二人に両肩を押さえつけられ、地面にひざまずいた。
「立場もわきまえずに、俊哉様に近づいて申し訳ありませんでしたって、さっさと謝りなさい!」
土下座をしろと行った女子生徒が、私の頭を押さえつける。
平気。
最下層だと言われようと、デブと言われようと豚と言われようと。
全然平気。
どうせ、私なんて、モブだ。
でも……。
「撤回してくださいっ!」
押さえつけられている力に逆らって頭を上げる。
「はぁ?」
不快そうに顔をゆがめ、クラスのボス的女子が私をにらむ。
「餌だって言葉を、撤回してください。人が一生懸命作ったものを馬鹿にするような言葉は許せませんっ!」
逆らったら、これから先の学校生活はひどいことになるかもしれない。
モブならモブらしくおとなしく逆らわずに謝っておけばいい。
でも……。
許せないものは許せない。
「何よ、こんなものっ!」
袋を逆さまにするのがスローモーションのように目に映る。クッキーが地面の上に落ちていく。
「ひどいっ!」
「うるさいわよ!豚がっ!豚なら豚らしくこうして食べればいいわっ!」
頭を再び押さえつけられる。他の女子にも手伝わせ、何人もで、地面に落ちたクッキーに顔を押し付けられた。
「何をしているっ!」
突然よくとおる声が中庭に響いた。
押さえつける手が緩んだところで顔を上げると、必死な形相で走ってくる花木田君の姿が見えた。
「何をしていると聞いているっ!」
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