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勘違いの結末
ある日、麻由は晩ご飯の支度をしながら夕方のニュースを見ていた。晩ご飯といっても大したものは作っていない。寒くなってからは野菜を切るだけでいいという理由でもっぱら鍋だ。
和真は『前に作ってくれた煮物が食べたい』と言うけれど、あれはスナックのママから分けてもらったおかずだから私には作れない。かといってここから八王子まで行くのはバカらしいから、まだつわりが酷くて、とごまかしている。
(次の引っ越し先は八王子にしたらいいか……そしたら時々ママの煮物、貰いに行ける)
子供が出来たから結婚すると告げたら、ママはすぐに快く辞めさせてくれた。そして、何かあったらいつでも戻っておいでと言ってくれた。子育てをするにも八王子ならちょうどいいかもしれない。
和真への愛情は全くないけれど、この子の父親としてちゃんと働いてもらわなきゃいけない。あまり冷たくしてリコンとかされたら困るから、ご機嫌取っておかなくちゃ。
(あー、面倒くさっ)
急いで結婚するために『尽くす女』を演じ過ぎたからそれを期待されてるのはわかる。でも尽くして欲しいなら、もうちょっとお金に余裕のある生活をさせてもらわないと。
(木藤不動産といういい会社に勤めてるってのだけがあいつのメリットなのに。もっと給料上がってくれないかな)
正直、和真はその他にいいところが何もない。
まずケチだ。最初にくれたクローバーモチーフのネックレスは金メッキで一万もしないような安物。子供じゃあるまいし、二十六の女にそんな安物をプレゼントするなんて信じられない。
結婚指輪も安いので済ませようとしてたし。文句を言ってなんとか高いのを買わせたけど、二人分買えなかったのには驚いた。そんなにお金無いの⁉︎ って。
新婚ぽく指輪を嵌めた二人の手の写真を投稿したかったのに、それすら出来なかった。
それから、ぼやっとしてるから優しいのかと思いきや、全然そうでもないこと。
私がつわりだから家事を代わりにやってもらっているが、嫌々やっているのがハッキリ顔に出ている。無言で、俺だってしんどいのに……とアピールをしてくるのがムカつく。まあそんなの無視してるけど。
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