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「お父さん!」
僕は走った。急いで走った。
そして、お父さんを抱きしめたんだ。
お父さんは、右の足に変な機械を嵌めていた。
転ばないように杖を持っている。
頭には包帯を巻いていた。
お父さんが生きてた。
死んだと思ってたけど、死んでなかった!
「ヒロ、ただいま。淋しくなかったか?」
僕は頭を、横に振った。淋しくなんかない。もう5さいだから。
「そうかそうか。さすが5さい」
僕は、お父さんを抱きしめたまま離さなかった。
「ヒロ。お父さん、まだバスケしたり、お馬さんごっこしたり、一緒に風呂入ることもできないけど、怪我が治ったらまたやろうな」
「大丈夫。お風呂は、ゴミ箱父さんと一緒にはいるから」
「あはは。ゴミ箱を、俺の代わりと思って過ごしてたのか」
「ちがうよ。ゴミ箱が、お父さんになってくれたの」
「へぇ。お父さんを演じてくれたってことか?」
僕は、そうだよって言った。
そしたら、お父さんが、ゴミ箱にマジックで顔を書いてくれた。
お風呂はお母さんと入った。
寝る前に、ゴミ箱父さんに『おやすみ』を言いにいったら、お父さんがマジックで描いた顔が、ニッコリ笑ってくれた。
おしまい
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