ゴミ箱父さん

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ゴミ箱父さん

 ゴミ箱さんは、しゃべるんだ。 「おい、ヒロ! なぁに驚いてんだ。ゴミ箱がしゃべるのは意外だったか?」 「いがい? (ってなんだろう)。僕、一人でさみしかったから、誰かしゃべれる人を探してたの。そしたらゴミ箱さんがしゃべった!」 「嬉しいか? うん? どうだ?」 「うれしい」 「そうか、そうか。それじゃあ、一緒に遊ぼう」 「うん! 何して遊ぶ?」 「『ゴミ、散らかしか~ら~の、ゴミ拾いごっこ』に決まってんだろが!」  僕は、ゴミ箱が散らかすゴミを一生懸命集めた。  はじめは面白かったけど、何回も繰り返していると、だんだんつまらなくなった。  ずっとゴミを拾ってるだけだから。 「ねえ、ゴミ箱さん。やっぱりさみしいよ。お母さん、ちゃんと帰ってくるかな」 「それは分かんねぇ。お父さんみたく、帰ってこねぇかもしれねぇなぁ」  そんな。それはもういやだよ。  一人になりたくない。  僕は、一人になりたくない。  鼻がつーんとしてきて、涙がこぼれそうになった。
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