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ため息交じりの晶に、凛は気楽な笑い声を上げる。思わずむっとした晶が睨みつけるが、かえって凛のツボに入っただけだった。凛は華奢な体を震わせて、ひゃっひゃっと珍妙な声で笑っている。
文句を言いつつも、晶の手元は素早く動いて荷物を机の横に掛けていたカバンに放り込んでいた。あっという間に帰り支度を整えた晶は、せめてもの腹いせに、飲み干した牛乳のパックを凛の方に押しやり、
「お前だって他人事じゃないんだからな。絶対近いうちに逆パターンになるぞ」
と恨みがましい声で言ってやる。しかし凛の方は笑ったままで、晶が押し付けた牛乳パックを鷹揚に受け取った。
「そうかもだけど、今日のところはあたしの出番じゃないもんねー」
じゃあねー、とひらひら手を振る凛に、晶は最後の一睨みをくれて、教室を飛び出した。
校舎を出た瞬間、圧力すら伴うような熱気が晶の全身を包む。冷房でせっかく冷やされていた体を、一瞬で汗が伝い始める。
回れ右して校舎の中に戻りたい気持ちを根性でねじ伏せ、晶は自転車置き場に向かった。置いていた自転車の鍵を外し、荷物をかごに放り込むと、校門に向かって走り出す。
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