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しかしもう、慧も晶も、惣一郎の言葉になど、怯むはずもなかった。
「惣一郎さん、あんたにもうひとつ、普通の人間の力を教えてやるよ」
晶はそう言い放つと空を見上げ、右手を高く掲げた。そのまま目を閉じ、開いていた手を握りこむ。
その瞬間、空が消えた。そうとしか見えなかった。さっきまで見えていた、迫りくる地球の光景と、その周囲に広がる宇宙空間が、とてつもなく大きな布地をたわめたように歪み、一瞬にして消えた。
惣一郎が驚愕したのと同時に、別の空が現れた。それは、さっきまでの光景と似ていたが、地球とこちらの惑星の間の距離だけが、晶かに先ほどよりもはるかに遠ざかっていた。
「これ、どういうことかわかる? こっちが本物。さっきまでの空は偽物。俺が偽物を本物に見せかけてたんだ」
惣一郎が息を呑むのが、二人にははっきりとわかった。
「あんたはずっと、こっちの世界を膨張させて、地球ごと人類を消し去ろうとし続けていた。でも、それを防いでいた人たちがいる」
惣一郎はもう、晶の方を見ていなかった。目の前の現実を受け入れることができずに、ただ茫然と空を見上げているだけだった。晶は構わず、さらに言い募った。
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