歪む世界の上で

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 晶は、自分が夢を見ているとわかっていた。だがそれがいつの、誰の夢なのかはわからなかった。  周囲を見渡すと、真珠色に輝く空間の中だった。それを見て晶は、意識を失う前、真珠色の強烈な光に包まれたことを思い出した。  やがて光は消え、晶は自分が現実の場面に放り出されたことを知った。あの壊れやすく繊細な世界ではなく、地球の景色が目の前に広がっていた。  見渡すと、どこかの屋敷の中にいた。中というより、二階の部屋の中を窓の外から覗き込むような場所に浮かんでいるようだ。晶は少し混乱して、周囲を見渡した。  そこはどうやら、かなり広い敷地に建てられた、大きな洋館のようだった。しかも窓の中をよく見てみると、使われている設備が妙に古い。  それを見てとった晶は以前、学校行事で横浜に行ったことがあるのを思い出した。修学旅行の班別自主行動の練習として、五、六人の同じ班のメンバーと、横浜の名所を巡ったのだ。  晶の班は、横浜にある洋館や外人墓地などを次々と巡り、最後に中華街へと出るコースを歩くことになった。そのときに訪れた洋館に、似たような雰囲気を感じたのを思い出したのだ。
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