歪む世界の上で

218/245
前へ
/245ページ
次へ
 しかし、晶が見ている部屋はなんとなく、館に住む人々が主に使っている部屋ではないような気がした。部屋の装飾や、使われている家具の様子が、横浜で見た洋館の主人一家の使う部屋よりもシンプル過ぎるような気がしたのだ。それによく見れば壁紙やカーテンが褪せていたり、窓ガラスが少し曇っていたりと、手入れも行き届いていない気がする。  広さはそれなりの部屋だった。晶の家のリビングと大体同じくらいだろうか。部屋の真ん中には大きなテーブルが置かれ、その周りに数脚の椅子が置かれている。  それだけの部屋だった。絵や花が飾られているわけでもなく、本当に必要最低限の家具が置かれているだけだ。  あるいは空き部屋なのかとも思ったが、それにしてはテーブルの上だけはきれいに拭き清められている様子で、普段から使われているのがわかる。  そこまで見て取ったとき、部屋の外からいきなり少年が一人で部屋の中に入ってきた。晶は窓から外を見た少年に見つかるかと思わずぎょっとした。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加