歪む世界の上で

222/245
前へ
/245ページ
次へ
 テーブルの小ささから、食堂などではなく、客とお茶を飲んだり、話をしたりするための部屋だと思われた。  今はそこに、この家の主人と思われる、洋装の男ともう一人、紋付袴姿の男が向き合って話をしている。  どうやら、誰かの縁談について話をしているらしかった。  やがて話の内容から、洋装の男がこの屋敷の主人で、惣一郎はこの男の子供に当たるらしい。一方で紋付き袴姿の男は、惣一郎に自分の娘を嫁がせようとしているようだった。ということは、この男が櫻の父親ということになるのだろうか。  この場面がいつのことなのかは具体的にわからなかったが、おそらく縁談の対象となっている二人は、まだ幼いようだ。ということは、先ほど見た惣一郎と、そんなに時系列的に離れてはいないだろう。  聞いていると、縁談は驚くほど短い時間でまとまり、あとは二人の男の個人的な話になった。その印象からして二人とも、子供の将来を案じるというよりは、家の事情を考慮してこの縁談に踏み切ったようだった。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加