歪む世界の上で

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 服装や屋敷の様子から、晶は、目の前の男たちがかなり身分の高いだろうことを感じ取っていた。大正時代、特に目の前の男たちのような、身分の高い人々の場合、結婚は往々にして親の一存で決まり、結婚式まで顔も見たことがないことすらよくあったということを何かの本で読んだ気もするが、どうやらこの場合も、それは同じらしい。しかし、それにしてもちょっとどうかと思うくらい、晶の目から見た彼らの態度は気楽すぎた。  晶自身はおろか、兄もまだ結婚していないので、親になるというのがどういうものか、晶には想像もつかない。しかし、特に男親にとって娘はかわいいものだと聞くし、それなら多少は相手の素性について確かめるくらいはしてもいいのではないかと思ってしまう。結婚してから相手の男が妻に平気で暴力をふるうような男だったりしたらどうするつもりなのだろう。  そこまで思ったとき、場面がまた不意に変わった。今度はどこかの庭園のような場所だ。  小さな石造りの噴水とベンチを備えた東屋の中に、二人の人物が座っているのが見える。先ほど見たのより、少し成長し、中学生ほどになった惣一郎と、同じくらいの年の頃に見える櫻だった。
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