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二人は仲がよさそうだとは、お世辞にも言えなかった。何しろ二人とも持参した本を読みふけっていて、相手には目もくれていないからだ。親の決めた結婚相手なのだから仕方ないと言えばそうなのかもしれないが、晶ならせめて、仲良くなる努力くらいはしたいと思う。何しろこれから一生を共にする相手なのだから、不仲よりは仲がいい方が、お互い過ごしやすいだろう。
しかし結局このときの二人は、使用人が呼びに来るまで、そのまま本ばかり読んで過ごしていた。
その後も晶の前で場面は変わり続け、惣一郎と櫻の生活ぶりを時と所を変えつつ晶に伝え続けた。
その中で晶は、どこかで予想していた通り、二人が家人たちから疎まれ、使用人たちからも侮られていることを知った。
人々の話から察するに、惣一郎は実業家である父親と、芸者である母親の間に生まれた子供だったらしい。細かい事情はわからなかったが、その後彼は母親と引き離され、父親に引き取られたらしい。しかし、彼の上には父親と本妻との間に生まれた兄がいたため立場は低く、特に本妻からはきつく当たられ続けたようだった。
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