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第3話 つれないメイドさんと、『グーニーズ』
「ねえ、映子さんって、いつから映画ファンだったの?」
いつものように映画を見終わって、わたしは映子さんに聞いてみた。
「子どもの頃からです。父が戦争映画マニアだったので、その影響でしょうね。泰菜お嬢様と同じくらいの歳頃には、学校帰りにレンタルビデオ屋に通うのが日課でした」
そんな昔から、映画にどっぷりだったなんて。
とはいえ小遣いが少なくて、月に二本くらいしか借りられなかったとか。
「辛いね」
「ですが当時は、今よりも大量の映画をテレビで上映していました。当時は、まだインターネット配信ビデオなどがありませんでしたから。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』なんか、TV版の吹き替えを何種類見たか」
すっごいイヤラシイシーンとかも、平気でお茶の間で流れていたんだって。すごいね昭和って。
「でも、自分で映画を好きと思えるようになったのは『ネバー・エンディング・ストーリー』あたりからでしょうか」
小説原作の映画で、いじめられっ子が本の世界に巻き込まれる話だ。
「幼稚園の遠足のときにバスで見ていたのですが、動物よりそっちの思い出のほうが多くて」
筋金入りだな、映子さん。
「子供の頃ってどんな映画をやっていたの?」
「有名だったのは『E.T.』でしたかね?」
親が離婚した少年が、宇宙人を故郷へ送り返すまでの物語である。
ピザの宅配を、日本の一般家庭に普及させたという逸話のある映画だっけ。
「で、子供の頃に大好きだった映画が、こちらです」
映子さんが、一本のDVDを見せてきた。『グーニーズ』である。
抵当に出されてた家を取り戻すために、海賊の財宝を探す話だ。
「知ってる! 【サノス】が出てくるやつでしょ?」
「よくご存知ですね?」
「SNSで話題になってたもん」
グーニーズには、『アベンジャーズ』シリーズでサノスを演じたジョシュ・ブローリンが、主人公の兄を演じている。
「不良デブの声、悟空だ!」
「このマウスという少年は、『スタンドバイミー』では、メガネのひ弱な少年役だったんですよ」
マジで?
「サノス、若! 服もだっさ!」
これは世界の半分消滅させようとするわー。不遇すぎるわー。
「とにかく、私たちの子ども時代は、映画全盛期でしたね」
「うらやましいなぁ」
「いえいえ。今のほうが、ずっとうらやましいですよ。動画配信のお陰で、どこでも映画が見られるなんて。私なんて、洗い物をしているときについついタブレットで映画を見ようとしてしまうくらいですよ」
それは職務放棄だね、映子さん……。
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