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世界は驚くほどに穏やかだ。 今日がどんな日であれ、それはきっと変わらない。 抜けるくらいの青空には雲がなかった。 青の濃いとこ薄いとこ。それしか目に映らなかった。 もしできるなら、僕を一緒に吸い込んで欲しいと思う。 庭の木も、芝生も、太陽の光によく映えて萌黄色の鮮やかなこと。 空気は暖かくて、ただじっとベンチに座っていた。 僕の反対側のベンチの横には、アジサイが咲き始めている。 「もうすぐ時間です。」 その声と、トンビの鳴き声が重なった。 …亡くなった。 もういないんだ。 お通夜も一緒にいたけど、なんか、嘘みたいって思って。でも、もう。 「足から順番に拾って骨壷に入れていきます。」 本当にいないんだ。 骨って、こんなに真っ白なんだ。 小さい。 こんなに小さかったかな。 ずっと一緒にいた滝川…旧姓で堀越結衣は、僕の親友だった。恋人よりも近くて遠くて。 近寄りたくない現実は、思っているよりも近くにいるんだって、あっさり認めるより他無かった。
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