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小、中、高…ずっと一緒に学校に通っていた。 高2で、結衣に彼氏ができるまでは。 僕にもその頃、彼女ができて。 休みの日は、別々に出かけることも多くなって、朝とか夜ご飯とかすれ違いになって少しだけ距離ができた。 結衣は気が強いから彼氏と喧嘩することもあったみたい。僕と彼女の関係を上手く行っていると決めつけて泣きながらずるいずるいって言ってきた。どうして?って聞くとただ泣くだけで、落ち着くように、ハチミツを入れたホットミルクを作ってあげた。 「晴のバカ。誰にでも優しくしたらだめなんだから。」 言われた意味がわからなかった。目の前で泣く子を放っておくのはなんとなくいけないような気がして少しだけ優しくしただけだ。 「彼氏、どんな人?」 「イケメン。」 「ふーん。」 「みんなに優しくするんだもん。私を放っといてるのに明日菜に、頭ポンポンしてた。」 「…誰?」 「あたしの嫌いな彼氏と同じクラスの子。」 「…ふーん。やきもちか。」 「ダメ?」 「複雑。」 「だから、明日菜の方が好きなの?って聞いたの。」 「結衣、大胆な。なんて?」 「明日菜と付き合うって。」 「しんど。」 「悔しい。二股じゃん?これ。」 「………で、泣いたのか。」 「悲しい。」 「そいつだけが男じゃないよ。乾杯しようぜ。」 「晴がバカで良かったよ。」 ホットミルクを入れたカップをカチンと合わせて、結衣を元気付けたつもりだったが、この日、実は僕も彼女と別れていた。 僕も泣きたかったからちょうど良いなって思ったんだ。 「結衣、きっともっと良い人がいるよ。…僕も別れた。」 大声で泣く結衣はきっと僕の分まで泣いてくれているんだと思ったら僕はあまり悲しくなくて、寧ろ、清々しいくらいだった。
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