不思議カフェNEKOMIMI

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不思議カフェNEKOMIMI

 村山早紀さん 小学館です。  平凡に生きてきた50代の律子さんが、弱っている黒猫と出会います。元来優しい性格で、今までも猫を助けては看取り、町を去って行く人の観葉植物を引き受けて、大切に慈しむ。そうして生きてきた律子さんですが、その黒猫を助けた日はいつもより頭痛が酷くてたまりません。そんな時、昔この町を去った占い師に渡された魔法のランプが目に映ります。 「ランプに願えばいい」周りから聴こえる不思議な声に導かれるように願えば、ランプからは猫の魔神が現れ頭痛はたちまちなくなります。  魔神は律子さんが今日までの命だと告げます。遺される助けた黒猫を思い、黒猫は律子さんを思い。双方の気持ちを汲み取り魔神は律子さんを『寿命を長らえさせる事は出来ない。でも人ならざるものに生まれ変わらせる事はできる』  律子さんと黒猫は一緒にいる事を願い、人ではなくなりました。「魔法も使える」と言う魔神の言葉通り、律子さんが願えば車が現れ空を飛べます。  こうして律子さんと猫たち(今まで看取った猫)は旅に出ます。  旅先で出会った人や人ならざるものに寄り添い、美味しい食事を用意して。律子さんがなりたかった善い魔法使いとなり、魔法のキッチンカー『不思議カフェNEKOMIMI』に招いてくれます。  久々。ものすごく優しい気分になれるお話でした。  文体もですが、律子さんが心から優しい人なんです。お父さんを早くに亡くし。お母さんはそれをキッカケに世界中を飛び回るお医者さんになり。それに比べて自分はなんて凡庸だと思っているけど。私から見れば律子さんは最初から可愛らしくて魅力的でした。  そして魔神、魔法使いなんてぶっ飛んでいるように思うけど。それが違和感なく感じるのは最初から、律子さんが魔法使いを憧れと思っていたりする、優しい世界が表現されているからなんだろうなと思いました。  紅茶が大好きな律子さん。この本自体がデトックスのように思います。読んだ後に優しい気持ちになれました。図書館本でなかなか読む時間が取れず、慌てて読んだのですが、ちゃんと買う!  こんな優しいお話や文章が書けるようになりたい。
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