ラスト・レター

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『生きることに苦しんでいる、君へ』 これが、君に出す最後の手紙です。 私の命が残り少ない、と分かったからです。 余命三ヶ月だそうです。 私は、今まで、君に数えきれないほど、手紙を書いてきました。 いじめに苦しみ、両親の不和に、辛い思いをしてきた君に、どうにかして生きる希望を持って欲しかったからです。 死のうとしていた君に、この世の素晴らしさを、どうにかして伝えたかったからです。 私も、学生時代、いじめに遭い、死にたいと思いました。 それほど、いじめは辛いものです。 なおかつ、君の両親は、君の辛さを理解してくれず、学校に行かない君をめぐって、ケンカばかりしている……。 なんて、つらい毎日だろう……。 君は、今、もう、希望なんて、これっぽっちもないと思います。 それでも、今、それに、歯を食いしばって耐えて、生き抜いて欲しい。 なぜなら、その苦しさは、ずっと続くものではないからです。 人生は、時に、残酷なほど辛いものですが、ふと、素晴らしい一面を見せてくれるものです。 失恋した時に見上げた、吸い込まれそうな青い空。 仕事でミスして、泣いた帰り道に、見上げた、満天の星空。 それから、君には、これから、本当の親友ができるでしょう。 何でも、話せる、大切な友達です。 だから、今、生きることを諦めないで欲しい。 これから、君には、思いもしない、素敵なことが、たくさん待っているのです。 不思議なことのようですが、私は、余命宣告を受けてから、この世界が、キラキラと輝いて見えるようになりました。 道端のブロックのわずかな隙間から、顔を出している名も知らぬ小さな花。 毎日、当たり前に見ていた、立ち話する近所のおばさんたち。 かすかに聞こえる、郵便配達のバイクの音。 ……それらが、愛おしくてならないのです。 私は、これらを十分、愛し、十分、生きました。 だから、もうすぐ、私の命は、絶えますが、後悔はありません。 最後に、君に伝えたい。 人生は、途中で投げ出さない限り、生きるに値するものです。 生きていれば、幸せだと感じる時が、必ず訪れるのです。 生きて下さい。 きっと、それが分かるから……。 それでは、私にも、生きる希望を与えてくれた君に、 「ありがとう」 そして、 「さようなら」 いつか、また、会えることを信じて。 君の応援者より       ー おわり ー
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