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001
結婚して三年。
ほぼレスになってからも同じ年数だ。
それでも夫婦仲は、そんなには悪くなかったと思う。
週末には一緒に出かけ、記念日は二人でお祝いをした。
ただ子がいなく、そういう関係がないだけ。
部屋も別。
ベッドも別。
豊かな生活で、このまま恋人のような……。
それでいて、どこか薄く透明な関係がずっと続くと信じていた。
「ね、寒いから毛布出したんだけど」
そう言いながら私は夫の部屋へと入る。
私の部屋とは違い、黒で統一されたシックな部屋。
やや無機質にも思えるその部屋は、物が少ない。
「あれ、寝ちゃったの? もう。布団もかけないで。風邪ひくよ」
ベッドの上でスマホを片手に寝落ちしている彼に、私は毛布をかけた。
部屋には、こうした用事がない限り基本はほどんど入ることはない。
思ったよりは、綺麗なのよね。
もっと男の人の部屋って、ぐちゃっとしてるイメージなんだけど。
部屋はそれぞれが管理し、掃除も各自となっている。
あまり家事には協力的ではなくても、自分の部屋は綺麗にしているようだった。
「んー」
部屋を一周見渡し、そのまま出ようとするとゴトリと何かが落ちる音が聞こえた。
彼の手から落ちたスマホ。
画面は明るく、開いたままのようだった。
「充電もしないで、なにしてるんだか」
些細な少しの好奇心と、あくまで充電をしないとという親切心。
私はふと、スマホを手に取り夫が最後に見ていた画面を見てしまった。
「なに、これ……」
浮気の写真だったら、まだ許せたのかもしれない。
どうせ私たちはレスだ。
だからそこ、そういうことを外に求めたって仕方がない。
心のどこかでそう思っていたから。
でもそこに写っていたモノは違っていた。
全身タイツのような服に身を包み、女物のかつらを被った夫の写真。
その彼の後ろには、小綺麗だが176㎝ある夫よりもはるかに大きくガタイの良い女性らしき人。
恍惚そうな顔を浮かべる二人。
「レスって……」
言いたい言葉を全てのみ込んで、私はそっとスマホを充電器に差し込んだ。
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