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『なぜ、君と争わないといけない。僕は...』
光り輝くスポットライトの元へと歩く。
そこに立つと心も体も震え上がる。
「はい、ストップ」と演出家から声がかかった。
その声と共にライトが消えた。
「康太くん、そこもう少し感情込めてって言ったよね?聞いてなかったとか?」
「い、いえ。すみません」と康太は震えながら発言し、頭を下げた。
「じゃあ、もう一度行ってみようか」と演出家からの声がかかる。
僕は舞台の上で“演じる”ことをしないと何もできないただのモブ。決して主人公や主人公たちの仲間の一員にはなれない。
主人公と言えば、いつもこの劇場では同い年の凌介が座長だ。
『こうしては姫が攫われるのも時間の問題だ』と演技も堂々としている。
「凌介さん、お疲れ様です」
「凌介くん、ここ確認一緒にしてくれるかい?」
凌介は皆から慕われててカッコいい人気者。
僕とはまるで正反対。
別にねたんでいるわけではない。
ただ、僕と違って凄いなって思う。陰で努力してて、それをみせない姿勢とか。
「はい、そこ邪魔。僕の衣装早く持ってきてくれる?」
クールで口は多少悪いが、演技に関しては跳びぬけて上手い。
役が一輝に憑依してるんじゃないか?ってくらいに。
『我は神。そなたは何者だ?』
今回の一輝の役は女性の役。だけど、違和感なくて思わず見とれてしまう。
ごくりと息を飲む。
役者には色んな人がいて、それぞれ個性があって凄く魅力的だ。
だから、僕も興味が沸いてこの道を進もうって思った。
初めて舞台役者を見たのは、母さんと一緒に行ったおとぎ話のリメイクをした物語だった。
その時見た舞台では役者さんがイキイキとしていて、キラキラと輝いていた。
(僕も大きくなったらあのお兄さん達みたいになりたい!)
心に決めた僕はその舞台を見て、親に頼み込み小学生の時に劇団に入れてもらった。
「康太って言います!よろしくお願いします」
僕は小さい時から大人しい性格だったが、舞台になってる時は仮面をつけてるように演じることができていた。
最近ではスランプにハマり怒られっぱなし。
スランプから抜け出すために、本を探していた。
「うーん、舞台について、舞台について...」
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