プリンセスを演じる

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「首都の陥落は王国の滅亡と同義よ。それでお父様はオリオン帝国の皇帝(エンペラー)ザクセと和平交渉を進めたわ。その交渉の結果、停戦合意が発効し、ペルテウス王国はオリオン帝国に吸収されることが決まったの。ただしペルテウス王国は内政自治権を持ったまま、ペルテウス王家も皇帝(エンペラー)ザクセの臣下として存続できることになった。でもその代償として……」 「代償……?」 「そう、ペルテウス王国がオリオン帝国の軍門に降る証として、私が皇帝(エンペラー)の長子、王子(プリンス)ハンスに嫁ぐことになったの」  その言葉に私は衝撃を受けていた。 「……もしかして……私がアメリア様を演じてオリオンに嫁げと……?」  王女(プリンセス)が口角を上げる 「そうよ。私はそんな政略結婚なんてごめんなの。貴女には予備王女(スペアプリンセス)として私を演じて、オリオンの王子(プリンス)に嫁いで貰うわ」  やっと何故ここに連れてこられたのか完全に理解出来た。でも……。 「……そんなことを受ける訳ないでしょ」 「えっ? でもこの提案、受けた方が良いわよ。見返りがあるから」 「……見返りって?」  更に王女(プリンセス)が口角を上げた。 「乳母のグレイスは、王国への反逆罪で即時死刑の予定よ。貴女が予備王女(スペアプリンセス)として私を演じるなら、この刑の執行は永久に延期されるわ」  左横に立っていたグレイスが私を振り返った。 「ミク様。私はどうなっても構いません。ご自分を大事になさって下さい」  そう嘆願する彼女の表情を見ながら、私は既に心を決めていた。私を愛し守ってくれたグレイス(お母さん)を助ける為に王女(アメリア)を演じると……。  それを理解している王女(プリンセス)アメリアは意地悪そうな眼差しで私を見下ろしていた。
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