プリンス・ハンス

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プリンス・ハンス

 オリオン帝国の王子(プリンス)ハンスが率いる旗艦艦隊三万隻がキームブルグ要塞を伴って首都星ロッカビーの衛星軌道に空間跳躍(ハイパーリープ)して来たのは、私が首都星に連れてこられて二週間後のことだった。  この二週間を使って、私は促進記憶システムでのアメリアの記憶の移植と、王女(プリンセス)としての所作やマナーを叩き込まれた。  私が嫁ぐにあたって、アメリアは私の双子の妹のということでオリオン帝国には説明していて、それで王女(プリンセス)が二人居るという矛盾を回避していた。ある意味アメリアは名前だけだけど私をことになる。  そして私は衛星軌道で待つオリオン帝国軍の旗艦トリスタンにシャトルで向かい、その貴賓室で私の婚約者となる王子(プリンス)ハンスを謁見することになった。王子(プリンス)はまだ二十一歳ながら帝国元帥として全軍を率いていて帝国を勝利に導いている。  私が貴賓室の中央で首を垂れて待っていると前方のドアから王子(プリンス)が入って来た。 「やっと会えたね、王女(プリンセス)アメリア。もう良いよ。頭を上げて」  その声にゆっくり頭を上げる。そこには金髪の美男子(イケメン)が笑顔で私を見つめていた。しかし彼が美男子(イケメン)ということ以上に私は大きな衝撃を受けていた。 「えっ? 貴方が王子(プリンス)……ハンス?」  私は思い出していた。彼は一年前にラカーユで強盗に遭った所を助けた男性だったからだ。 「うん? アメリア。君は僕とことがあるのかい?」  ハッとして大きく首を左右に振る。 「いえ、王子殿下(ユアハイネス)。初めてお会いしました」  心臓がドキドキする。もし私が予備王女(スペアプリンセス)としてアメリアを演じていると露見したら、グレイスが処刑されてしまうからだ。
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