レストラン ザ・ベル

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レストラン ザ・ベル

 既に閉店時間が近づいていてもうレストランの中にお客様は居ない。小さく溜息を吐くと首に掛かった十字架を握りしめた。今日の売上では店を維持していくのがやっとなレベル。苦しい生活はもうずっと続いていた。  ドアが開く音に振り返ると、体格の良い中年の男性が入って来る所だった。 「いらっしゃい! ジョン。今日は遅いわね」  彼は微笑みながら、お気に入りの席に腰を降ろす。 「ああそうなんだ。いつものを頼む」  私は母と一緒に、この辺境惑星のラカーユで小さなレストラン『ザ・ベル』を営んでいた。レストランの近くにはテトラチウムの鉱山が在って、このお客様のジョンはその現場を束ねる工長の立場だ。 「分かった、いつものね」  大きく頷くとキッチンの母に声を掛ける。 「ジントニックを。それとハギスとスコッチエッグをお願い」  母がグラスを差し出す。 「はい、ミク。ジントニックよ。料理の方は今準備しているわ」  母はとっくに飲み物の準備を終えていた。直ぐにそれをジョンのテーブルに運ぶ。彼が大きく伸びをしている。 「今日は作業監督が終わったあと本社と超空間通信の会議があって残業だったんだ。やっぱり戦争は厳しい状況だってさ……」  私達の国、ペルセウス王国は二十年前からオリオン帝国と戦争をしている。こんな辺境の星に居るとその影も感じることはできないけど。
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