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スペア・プリンセス
母に手を引かれ機動兵器の腹部の操縦席に乗り込む。そこには前後に二席のシートが在り、私は言われるがままに後席に腰を降ろした。
母が自分の首に掛かっていた十字架の鍵石を左のコンソールの穴に差し込んだ。すると全面360度のスクリーンが起動し、外部の風景と様々な情報が表示された。
「お母さんの鍵石で機動兵器が……?」
「ええ、そうよ。王国貴族の鍵石で機動兵器を動かせるわ」
「……王国貴族って……? お母さんが?」
母が私を振り返った。
「そうです。でも私はミク様の本当の母親ではありません。乳母のグレイスです」
「ミク様って……。お母さん……じゃないの?」
「はい、ミク様の鍵石の赤い竜は王家の紋章……」
「王家の? じゃあ、それを持っている私は……?」
「はい、ミク様はペルセウス王国の王女アメリアのクローン、予備王女です」
その言葉に激しい衝撃を受けて私は固まった。
グレイスが機体の起動準備をしながら説明してくれる。
国王家では世継ぎの妊娠は必ず体外受精で行われる。受精卵が二つに分割した時に、その片方を王妃の母体に戻し、もう片方は人工子宮で育てる。そして王妃から生まれたのが王女となり、人工子宮から生まれたのが予備王女となる。
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