プロローグ

1/1
前へ
/15ページ
次へ

プロローグ

 物語の一年前。ペルセウス王国辺境惑星ラカーユ、首都サンダー市郊外。  その日、十六歳になっていた私は郊外の州間道路(インターステート)電動二輪(エレモト)で走っていた。サンダー市まで十マイル程の地点まで走った時、路肩に停まった電動車(エレカー)の前で若い男性が手を振っているのが見えて来た。近づくとその男性は金髪でサングラスを掛けている。こんな寂れた場所でと訝しみながら、電動二輪(エレモト)を停めると男性がサングラスを取った。  それは正に私好みの美男子(イケメン)。その顔に見とれていると、彼が私に近付いて来た。 「やあ助かったよ。レンタカーを借りてドライブしてたら二台の電動車(エレカー)に強制停車させられて、金目の物も携帯(セル)も全て取られたんだ。この車の鍵石(ジュエリー)も取られたから、車が動かせなくなって困ってた」  彼に見とれていた私はハッとして答えた。 「最近この辺りで強盗が頻発しているんです。災難でしたね。多分、私の鍵石(ジュエリー)電動車(エレカー)は動かせると思います」  そう言いながら首に掛けた十字架を彼に見せる。 「それが君の鍵石(ジュエリー)……。赤い竜の紋章は珍しいね」  彼に微笑むと鍵石(ジュエリー)電動車(エレカー)のスロットに差し込み見事に起動してみせた。 「凄いな。この星の鍵石(ジュエリー)はそんな汎用性を持っているのかい?」  小さく首を左右に振る。 「いいえ、私の鍵石(ジュエリー)が特別なの」  男性が口角を上げて大きく頷く。 「いずれにしろ助かったよ。ありがとう。君、名前は?」  私は少し躊躇したけど電動二輪(エレモト)に跨りながら答えた。 「私はミク。母のレストランで働いているわ。それじゃ気を付けてね」  そう言って電動二輪(エレモト)を発進させた私がミラーを見ると、男性は私の方をずっと見つめていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加