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『藤崎さんのサッカーって、なんだかサッカーが大好きな子供みたいというか。……ああ、子供の頃と同じように、ずっと好きな気持ちを保っているのが凄いなって思います』
『ありがとうございます。元々兄貴がサッカークラブに入ってたんですけどね。それで俺も、一緒に連れてってーって親父に駄々こねて。それで一緒にサッカークラブで練習するようになったら、兄貴より俺の方がサッカーにハマちゃって。で、もう幼稚園の時からずーっとサッカー漬け。やればやるほど楽しいんですよ、サッカーって』
『その情熱はすごいです』
取材を理由に一緒に食事をしたりするうちに、どんどん気持ちがそれだけでは済まなくなっていったのだった。
もっと彼のことを知りたい。できれば、サッカー選手ではない顔も。そんなことを思っていた、とある日の食事会。ふと、こんな話題が上ったのだった。
『俺、カードゲームも好きなんです。決闘王、知ってます?』
『え』
それは、私が子供の頃からひそかに集めているトレーディングカードゲームの名前だった。こっそり、地域の大会に参加したこともあるほどだ。最近はオンライン対戦しかやっていないけれど。
『サッカーが好き過ぎて、決闘王でもサッカーでデッキ組んでるんです。“サッカーキング”のテーマで回してる人、あんまり見ないんですけどね。事故りやすいし……』
『あ、あの、その』
チャンスだ、と思ったのだ。サッカーから完全に離れてはいないが、それ以外の趣味を知ることができた。しかも、私と共通の趣味。
『私も決闘王やってて。その……“サラマンダー”で回してるんですけど……一回対戦します?こ、今度デッキ調整して持ってきますから』
明らかに取材目的ではない誘いなのは明白だった。断られても仕方ない。下心が透けて見えると倦厭されるかもしれない。びくびくしながら膝の上できつく両手を握っていた、そんな私に。
『……なんなら、今度俺の家に来ます?』
思春期の少年のように顔を真っ赤にして、太陽は言ったのだ。
『俺ももっと、富田さんのこと、知りたいですし』
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