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俺の腕に絡まりながら、彼女が幸せそうに微笑んだ。
彼女とは交際三ヶ月。
同じ大学に通う彼女は、茶色く明るい髪に大きな瞳。
小さくて、くるくると動く表情はまるで子リスのよう。
彼女から告白された時は、何かの企画か?
と疑うほどびっくりした。
俺は見た目は普通だが、隠れ陰キャだ。
外ではこの中身を隠して生きている。
「ゆぅくーん。ねぇ、週末はどーするの?」
「え、今週末? あー、俺用事があるんだけど」
「えー! 彼女置いてどこに行くのよ。まさか、他の女じゃないでしょうね」
先ほどの天使のような笑顔はどこに行ったというぐらいに、表情ががらりと変わった。
そして絡んだ腕が、まるで縛り付けるようにキツくなる。
そう彼女は極度のヤンデレだ。
俺の行動、言動。
SNSやその全てに至るまで監視されている。
だからこそ、困るんだ。
「あみっていう、かわいい彼女がいるのに浮気なんてするはずないだろ。帰ってきたらすぐ電話するし、行った先でも写メ送るよ」
「でもぉ」
「ちょっと実家に荷物取りに帰るだけだって」
「ホントにそれだけ?」
「本当にそれだけ。夕方までには帰るから」
「それなら、いいけどぉ。むぅ。浮気したら、絶対に許さないからね」
「浮気って」
「あみ、知らない女とゆぅくんが一緒とか絶対に無理だからね」
「もちろん、分かってるよ。あみは可愛いなぁ」
その言葉に、彼女はかわいく頬を膨らませた。
そして俺はなだめるように、彼女の頭を撫でる。
たったそれだけで、彼女はご満悦だ。
もし俺の本当の目的を彼女が知ったら。
そう思っただけでぞっとする。
端から見れば、誰よりも可愛い自慢の彼女なのかもしれない。
だけど俺には――
この週末、俺は推しのグッズを買いに行く。
彼女によく似た、可愛いラノベのキャラクター。
だがもし彼女にバレたら。
俺は異世界まで逃げなけらばいけないかもしれない。
その前に手を打たないと。
ロックをかけたスマホの画面を見ながら、そう思った……。
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