001

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 俺の腕に絡まりながら、彼女が幸せそうに微笑んだ。  彼女とは交際三ヶ月。  同じ大学に通う彼女は、茶色く明るい髪に大きな瞳。  小さくて、くるくると動く表情はまるで子リスのよう。  彼女から告白された時は、何かの企画か?  と疑うほどびっくりした。  俺は見た目は普通だが、隠れ陰キャだ。  外ではこの中身を隠して生きている。 「ゆぅくーん。ねぇ、週末はどーするの?」 「え、今週末? あー、俺用事があるんだけど」 「えー! 彼女置いてどこに行くのよ。まさか、他の女じゃないでしょうね」  先ほどの天使のような笑顔はどこに行ったというぐらいに、表情ががらりと変わった。  そして絡んだ腕が、まるで縛り付けるようにキツくなる。  そう彼女は極度のヤンデレだ。  俺の行動、言動。  SNSやその全てに至るまで監視されている。  だからこそ、困るんだ。 「あみっていう、かわいい彼女がいるのに浮気なんてするはずないだろ。帰ってきたらすぐ電話するし、行った先でも写メ送るよ」 「でもぉ」 「ちょっと実家に荷物取りに帰るだけだって」 「ホントにそれだけ?」 「本当にそれだけ。夕方までには帰るから」 「それなら、いいけどぉ。むぅ。浮気したら、絶対に許さないからね」 「浮気って」 「あみ、知らない女とゆぅくんが一緒とか絶対に無理だからね」 「もちろん、分かってるよ。あみは可愛いなぁ」  その言葉に、彼女はかわいく頬を膨らませた。  そして俺はなだめるように、彼女の頭を撫でる。  たったそれだけで、彼女はご満悦だ。  もし俺の本当の目的を彼女が知ったら。  そう思っただけでぞっとする。  端から見れば、誰よりも可愛い自慢の彼女なのかもしれない。  だけど俺には――  この週末、俺は推しのグッズを買いに行く。  彼女によく似た、可愛いラノベのキャラクター。  だがもし彼女にバレたら。  俺は異世界まで逃げなけらばいけないかもしれない。  その前に手を打たないと。  ロックをかけたスマホの画面を見ながら、そう思った……。    
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