丸尾ラーメン

毎日、同じ仕事辛くないか。
全然、そんなことない。
常連のお客さん、たまに来るお客さん、初めて来るお客さん色んなお客さんがいるが、みんな外で頑張ってきて、美味しいラメーンを食べたいってうちに来てる。
お客さんに気持ちよくラーメンを食べてもらおうって、一生懸命やってるとな一日がすぐ終わっちまんうんだよ。
一人一人全力でやってると同じことなんてほとんどない。
同じなのはラーメンの味くらいだよ。
ときにはやりすぎてしまって、お客さんに気を使わせてしまうこともあるさ。最高のギリギリを攻めてると時々失敗もするものだ。
でも、こうやってお客さんが来てくれてるから、満足してくれてる人が多いんだろうなって思うよ。
最近は海外からもうちのラーメンを食べにくるから、すげえよな。グローバルってやつよ。
あと、おれは究極のラーメンを目指してるから日々研究だよ。
おれの目指してるラーメンは原点回帰。
普通の醤油ラーメンをどれだけ美味しくできるか。ラーメンにはなぜ、チャーシューとメンマとのりが乗っているのか。
それぞれ単体として食べても美味しくであるが、スープと麺とと食べると絶妙にあうラーメンの究極原点回帰を目指してる。

なんで、支店を出さないのか。
暖簾分けした店からお金を取らないのかって。
そりゃ、今に満足しちまってるからだな。
というかこれ以上はできないんだ。
支店まで出しちまったら、支店がちゃんとうまくいってるか見なくちゃいけないだろ。
おれはこの店をやってくだけで、精一杯なんだよ。
これ以上やっちゃうとこの店の質が落ちちまう。
んだけど、このラーメンの味をもっとたくさんの人に食べてもらいてえって、武田とか水野とかがいうんで、じゃ、おめえたちで店出せばっていって、うちが丸尾ラーメンだから、丸武ラーメンとか丸野ラーメンとかいってやってるよ。
まぁ、あんまし出してすぐやめられると困るから3年は売上の一部はくれやって、言ってあるけどね。
今では20店舗くらいなって、なんだかこの前はテレビで出てたな。

外人は雇わないのかって。
そりゃ、雇える人がいるなら雇うけどさ。
やっぱし、外人ってのはあんましやる気ねえよな。日本人は質が良くて当たり前、一生懸命で当たり前だから、仕事の質は高えよ。ちゃんと仕事してるやつにちゃんと金払う。一応、おれがいうのもなんだけど、おれんとこの店員は給料高えよ。一応、おれの給料も高えけどな。だけど、やらせることもきついよ。おれからしたら当たり前のことばっかりなんだけどさ、やっぱできないやつらも結構いて、おれは絶対いうから、耐えられないやつはやめてくよ。でも、おれもそいつらのことまで見てる余裕はないからさ、お客さんが一番だから、おれについてきてくれてるやつらには本当感謝だよな。
独立するやつも多いけど、裏切られたと思わないかって？
男が独り立ちするってのをとめるやつがどこにいるんだ。おまえ、独立しないんかって聞くとお世話になったんで役に立ちたいとかいうから、自分の人生は自分のものだからやりたいことがあるならとことんやれ、おまえの人生の足枷になるほうが迷惑だって言ってやってるよ。みんな優秀だからなどんどん独り立ちしていくよ。
ておまえさん、話ばかり聞いてないで、ラーメン食べて思ったこと書いてくれや。おれはラーメン作るのはうめえ喋るのは上手くねえからな。喋る下手なやつがこんなに喋らねえか。
ほら、丸尾ラーメン一丁。

目の前日出されたラーメンは、
一見、普通の醤油ラーメンだが、醤油ラーメンの原点の完成型の見た目をしていた。
スープ透き通りすぎておらず最近の流行りのチャらついた感もない。見た目にインパクトはないが、洗練された本道勝負感が出ている。食べると一言でいうとうまい。だが、味を分析すると醤油と鶏ガラが深い味わいで、麺もスープをしっかり絡めて麺の美味さを感じることができる。チャーシュー、メンマ、煮玉子も麺やスープとあっている。昔ながらの醤油ラーメンと少し違う点はチャーシュー、メンマ、煮玉子が個々で主張しておらず、全体で一体感がある。チャーシューは柔らかくなるまで煮込まれて麺と絡めて食べるとホロホロと崩れて麺と一体となる。とにかく、究極の醤油ラーメンは丸尾ラーメンにあった。