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失われた微笑み
子どもの頃、《夕焼けのような笑顔》、と友人から言われたことがある。
最初にそれを言われた時、朱里《あかり》は意味がよくわからなかった。日溜まりのような、とか、太陽のような笑顔というのであれば想像はつく。だが、夕焼けのような笑顔とはどんなものだろう。
朱里はその友人に尋ねてみたが、彼女はただ微笑んだだけで何も言わなかった。朱里はなおも不思議がり、しばらく夕焼けを観察してみることにした。公園の砂場で遊んでいる時、頭上から差し込む光が弱まったのを見ては、砂の山からぱっと手を離して空を見上げた。あるいは学校からの帰り道、友達とのお喋りに花を咲かせる中で、ふと家々の屋根の向こうに広がる空に目を止めた。
そのたびに朱里が思ったのは、夕焼けの姿はいつ見ても違うということだ。空一面が揺らめく炎のように真っ赤に燃える時もあれば、花弁が水に溶けゆくように桃色に染まる時もあり、黄色の鱗を持った魚が緋色の海を泳いでいるように見えることもあった。それはさながら空をキャンバスとして、芸術家が色の持つ可能性を追求した試みのように思えた。
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