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「ほんっとに、いちいち腹立つ女ね。何が一人は嫌よ。たかだか男に捨てられたくらいで、寝ぼけたこと言ってんじゃないわよ。だいたい、毎日、毎日、死にそうな人たちを救おうと駈けずり廻ってるあたしが、やれ、鬼ナースだ、やれ、嫁の貰い手がないだ、って憎まれ口叩かれてるのに、人殺しのあんたは、みんなからちやほやされてさあ。あんた、知らないだろうけどね、あんたが殺しかけた山根さん、意識が戻って、状況を理解したとたん、なんて言ったと思う?あんたは無事かって、あんたは助かったのかって。おまけに、自分がこんなことになったのはあんたのせいじゃないって。あんたは何も悪くない、可愛そうな人なんだって。馬鹿もここまでくると、泣けてくるわよ」
リナは目をぱちくりさせて、口元に手をあてた。驚く顔に少し満足したのか、文香はさらに続ける。
「それからねえ、あんたの育ての親、義理のお父さんだったんだね、あの人。どっかの会社のえらいさんみたいだけど、仕事ほっぽらかして、ずっとあんたにつきっきりなのよ。それでさあ、殺されかけた山根さんのベッドの横で、床に頭すりつけて、土下座して謝ってんだよ。あんた、こんだけいろんな人振り回して、何、一人で、自分は不幸だって面してんのよ、いい加減にしなさいよ」
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