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1.トイレから拉致られて
「ちょっと来て」
トイレの鏡の前、教室に戻るのが嫌でぐずぐずと立ちすくむ胡桃の腕をそう言って掴む者がいた。
視線を転じて驚く。同じクラスの蓮見蓮子だ。が、胡桃にはなぜ蓮子が自分の腕を掴んでいるのかわからなかった。
「なに……あの……」
「いいからこっちきて」
言いながら蓮子は胡桃の腕を取ったままトイレを出る。そのまま教室へと向かうかと思いきや、彼女が向かったのは中庭だった。
「ご、ごめん。もう授業始まるけど、あの、蓮見さん?」
「授業とか本当は受けてる気分じゃないよね」
尋ねられ、胡桃は息を止める。その胡桃の目を蓮子はじっと覗き込んだ。自分より茶色い虹彩が射抜くようにこちらに向けられていた。
「無視、されてるよね。曽根さんたちに」
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