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お互いの想いを聞いている身としては、直接告白すれば問題ないのにと傍観する余裕もあったし、当事者たちの気持ちを考えるとこのじれったさが恋心を燃え上がらせるんだろうなと、勝手な想像をして楽しんでもいた。
二人には幸せになって欲しくて全面的に協力しようと思っていたけど、その中途半端な態度や立場がみんなを誤解させてしまうことになるとは、思いもよらなかった。
案の定、美香が誤解してしまったのだ。
私と陵介先輩が顔を突き合わせてコソコソと作戦を練っているところを、たまたま近くを通りがかった美香が目撃していたらしく、それが二、三度続いたところでとうとう美香がキレた。
「私の陵介先輩への気持ち知ってるくせに、二人付き合ってるなら騙すようなことしないで、ハッキリ言ってくれればよかったじゃない!親友だと思ってたのに裏でコソコソして、さぞ面白かったでしょうね!この裏切り者!」
「ま、待って!美香!」
涙を流して走っていく美香の後ろ姿を追いかけられず、ショックで足がすくんでいた私はただ呆然としてしまった。
違う……なんで?
私、邪魔してたんだ。
二人の間を取り持とうとしてただけなのに、どうしてこんなことに……。
「お前って最低だな」
振り向くと、そこには昂良先輩が立っていた。
先輩と出かける約束をして待ち合わせていた場所で、美香とのやりとりを運悪く見られていたのだ。
「昂良先輩、違うんですっ!」
「陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。……悪い今日の映画はナシにして。もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ」
そう言って、昂良先輩は足早にその場から去ってしまった。
「そんな……」
どうしてこんなことに。
私、何か悪いことした?
身動き出来ず、こうなった理由も瞬時には分からなくて、その場でただくず折れるしかなかった。
その一瞬で、親友と好きな人を二人同時に失った心の痛みは、今でも私の中でちょっとしたトラウマになっている。
そして、そのすぐ後に昂良先輩は珈琲研究部を辞めていた。
就活で忙しくなるから、という理由だと他の先輩から聞いたけれど、それでもなんとか誤解を解いてもう一度元に戻れたらと願った。
けれど連絡すらも取れなくなり、フットサルをしている姿さえも見かけることはなくなった。
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