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「やめた方がいいぞ。こういうタイプは平気で浮気するから」
ん?
久しぶりに口を開いたと思ったら、私ではなく的場さんに顔を向けて話している。
それってあからさまに私のことって言ってる、よね?
喧嘩売ってんのかな……この人。
そっちがその気なら私だって言うかな。
「そちらは理由も聞かないで逃げるタイプに見えますけど?」
私だってあなたに多少なりとも思うところがあるんですよ。積年のね。
満面の笑みを浮かべて穏やかに言い返した。
その言葉を受けて、無表情だった昂良先輩も余裕たっぷりな笑顔でこちらを見た。
またその顔が憎たらしいくらい男前で、私が先輩のことを知らなかったら一発で一目惚れしてたくらい。
でもそんなことはもうないですけどね!
「ははっ、俺は誰かさんと違って一途なタイプなんで、逃げも隠れもしないですよ」
「へぇ、そうなんですか。逃げて隠れて距離を置くような、弱気なタイプかと思いました」
「コソコソされたら誰でも距離を置くでしょう。弱気と責める前に自分の行動を振り返って欲しいですけどね」
「振り返るもなにも、問題もないのに理由も聞かずあっさり縁を切る方が問題あると思いますけど」
「それを問題ないと思ってるなら相当馬鹿なんですね」
くそー!ああ言えばこう言う!
自分は悪くないとでも思ってるみたいな言い方にさらに腹が立ってきた。
「人の話を聞こうともせず逃げる方が馬鹿だと思いますよ」
「聞くほどのことじゃなかったんでしょう」
「そのわりにいつまでもネチネチしてますけど」
「そう思ってるなら、もっと謙虚にして欲しいもんですけどね」
「〜〜〜っ!!」
息つぎもなく、お互い減らず口を叩きあった。
お酒のグラスを片手に、貼り付けたような笑顔を浮かべながらの争い。
落ち着いた雰囲気でありながら、視線だけは火花を散らしている。
これが5年振りに再会した者同士の会話だろうかと思うほど、刺々しい。
心の中のモヤモヤはお互い晴れないようだ。
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