プロローグ

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ゆりね「夕飯、まだ食べてないでしょう? これ、いつもの差し入れよ」 彼女がここに来たのはぺこらに食事を持ってきたから。夕飯だけではありません、昼食用の食事を持ってきてくれたり、時には外食に誘ってくれたり、寒くなる冬の季節にはマフラーや毛布等といった温かい物を持ってきてくれたりしてます。ですが・・・ ぺこら「ま、魔女の施しを受ける訳には・・・」 ええ、ぺこらはこの通り、未だに花園ゆりねを警戒してます。天使長としてのプライドというか何というか・・・この人からの施しを受ければ、ぺこらは知らず知らずの内に魔女の虜に陥ってしまう。だから、ぺこらはいつも断っているのですが・・・ 【ぎゅるるるるる】 言葉で拒否しても、お腹だけは正直になってしまいます。花園ゆりねは「施しじゃなく、邪神ちゃんの件のお詫び」と言いながら食事を渡してくるのです。もちろん理由はそれだけじゃなく「ほっとけないから」と言う理由で毎日のように食事を届けに来ます。 ゆりね「とりあえず、ここに置いておくから、ちゃんと食べるのよ? 邪神ちゃんがまた奪いに来るかもしれないし」 そう言いながら弁当を置くと、彼女はぺこらを見守りながら、自分の住むアパートへ帰っていきました。このお弁当、どうしましょう・・・捨てるのも勿体ないですし、何より、食べ物を粗末にするのは良くないので、ここは有り難くちょうだい致しましょうか。そう思って置いてある袋を持ち、ダンボールハウスの中に入ると、覚えのある香りが漂ってきました。 ぺこら「おや? この香りはもしや・・・」 覚えのある香りにもしやと袋から弁当を取り出すと、その中にはカレー弁当とトンカツが入ってました。しかも、ボンディ特製のカツカレー弁当です。以前、ぺこらが空腹で倒れそうになった日、花園ゆりねに助けられ、カレーを奢ってもらったあの店のようですね。大学にバイト、さらにはぺこらの食事を渡したり奢ってくれたりと・・・忙しい人です。天使の輪っかが戻ったら、いずれ、彼女や悪魔達を始末しなければなりません。それなのに彼女は・・・ 〜以前〜 ゆりね「そう、なら早く、天使の輪が見つかるといいわね」 そう言って彼女はぺこらの天使の輪が無事に見つかるといいなどと微笑んだのです。彼女は自分の命の危機が迫っているというのに、危機感が0です。まったく、花園ゆりねと一緒にいると、調子が狂ってしまいそうです。 〜現在〜 ともあれ、夕飯までもう少し時間がありますが、わざわざ届けに来てくれたので、温かい内に食べて体力をつけて、明日に備えて寝てしまいましょうか。 ぺこら「それでは、いただきます」 久々の温かい食事、ぺこらがカレーを口に入れようとした次の瞬間、とんでもない事が起きてしまったのです。 【ピキッ】 ぺこら「・・・え?」 いきなり、変な音が鳴り出したので、弁当をその場に置き、何だろうと思いながら外に出るとそこにはあり得ない物が現れたのです。 ぺこら「な、何なのですかこれは・・・」 ぺこらが見た物、それは見るからに怪しさを物語る【亀裂】のような空間。しかも、あちらこちらとヒビが入っていました。この時、嫌な予感を感じたので、ぺこらは急いでダンボールハウスの中に戻ろうとしました。しかし 【ビキッ・・・パリーン!!】 強烈な音と共に暴発した亀裂は異空間へ繋がる大穴へと変化し、ブラックホールの如く、辺りを吸い寄せて来たのです。 ぺこら「ひ、引きずられるぅぅぅ!」 ダンボールハウスに逃げようとするも間に合わず、ぺこらは引き寄せられる形になり、その辺の木にしがみつく事にしました。しかし、それも意味を為さなくなってしまいます。引き寄せられる引力はまさに重力の如く強くなっていくからです。 ぺこら「もう・・・限界・・・です・・・」 強くなる重力に逆らえなくなり、ぺこらの腕はもはや限界まで来てしまいました。そして・・・ ぺこら「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 限界を超えた腕を離してしまい、ぺこらはその異空間の大穴の中へすっぽりと入ってしまったのです。まだ、カツカレー弁当を一口も食べてないのにこんな事になるなんて・・・ぺこらはどうなってしまうのでしょうか・・・
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