次こそは!

1/1
前へ
/10ページ
次へ

次こそは!

「はい大翔君32秒2、健太君36秒6、圭一君39秒0。じゃあダウン200行ってきて!」  須田の声が響き渡る。大翔はゆっくりとけのびをし、水をかいていった。最後の1本はぎりぎりまで自分を追い込んだ文字通りのオールアウト。乳酸が溜まりに溜まった中での全力の1本だった。 「よし、じゃあ全員並んで。ありがとうございました」  須田の号令の下、スクール性が全員一斉に頭を下げる。 「ありがとうございました」  挨拶が室内に響き渡った。大翔は頭を上げ、更衣室へと歩を進める。 「大翔君」  須田の呼び止める声が聞こえた。 「最近、目の色が変わったな」 「そう?」  大翔が頷く。 「よっぽど悔しかったのか?2か月前の結果」 「…………うん」  言葉少なに大翔は答えた。 「そうか……。こっちにできるバックアップは全力でやるから。きっと次は大丈夫。このまま頑張っていこう」  須田の言葉を受け、大翔は力強く頷いた。 「水泳は昨日の自分との闘いだ。追い込まれたときにこそ真価が問われる。全力を出さない癖がついてしまったら、それは将来的に受験勉強にも、仕事をする上でもついて回ってきてしまう」  今となっては離れてしまった遠藤の言葉は、2か月経った今も大翔の胸に突き刺さっている。そして次の大会では絶対に返り咲かないといけない、いや、再び表彰台の真ん中に立って見せる。大翔はそう心に誓っていた。 【終】
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加