22拍の真実

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「賢二はな、去年に比べて物凄く身長が伸びたんだ」  遠藤はそう告げ、話を続けた。 「大翔と同じく、賢二も六年生だろ?どんどん身長が伸びる時期だ。身長が伸びたら腕だって長くなるし、脚だって長くなる。水をかくリーチも当然長くなるし、その分全力で練習をすればタイムだってどんどん縮んでいく。大翔は他の奴らより少し成長期が早くやってきたから、身体が大きいという大きな強みを持っていた訳だ。練習を本気でやらず天狗になっているうちにアドバンテージを使い果たしたお前と、日々自分の限界に挑み続け体もすくすくと成長してきた賢二。大きかった差もいずれは縮まる。そういうもんだ」 「今のコーチからは何も言われなかったのに」 「今大翔を受け持ってるのは須田君だったな?」  大翔は頷く。 「須田君は優秀なコーチだよ。もし大翔が手を抜いていたとしたらそれはちゃんと気づいてる。もしかしたら色々言いたいことはあったのかもしれない。でもな、全国的に凄い選手を受け持つっていうのは、難しいんだ。色々な事情があるんだろう。でも僕は相手が誰だろうと、手を抜いている奴は叱りつけるし、どんなに遅くても手を抜かずベストを尽くし続ける奴は絶対に見捨てない。そして去る者は追わない。そう決めている」  大翔が口を真一文字に結んでいる中で、遠藤が再び、笑顔のままで口を開いた。 「まぁ、今回はいい勉強をしたな」  遠藤の言葉を前に、大翔の心に重いものがズシリとのしかかる。大翔は気まずそうな面持ちで遠藤のもとを立ち去ろうとした。 「最後にひとつだけ」  振り返る大翔を遠藤が呼び止める。大翔が振り返ったところで、遠藤は深々と頭を下げた。 「あのときプルブイをぶつけたこと、今でも覚えている。本当にすまなかった」  大翔は無言で頷くと、再び遠藤に背中を向けた。 「次の春も絶対全国来いよ。僕も絶対に来るから!」  賢二の声が響く。大翔は背を向けながら手を振る。大翔は恥じていた。そして、決意を新たにしていた。
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