智春、5年後

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 近所のコンビニに入るまでは、いつもの日常だった。  夕食を探していると、その声が降ってきた。 「はーい、ルミナスのボーカル、明でっす!」  やや投げやりにも取れる、特徴ある声。  明だ。  僕の足が止まる。 「マサです!   ご来店の皆さまに、僕たちの新曲をお届けしまーす」  明るいマサの声が続く。相変わらずマイペースだ。 「この曲は、別れた彼女を思うラブソングです。遠くにいる誰かを思い浮かべながら聞くと、心に染みると思います」  蓮司さんの渋い声。連絡しろよと言われたのに僕は番号を変えてしまった。 「それでは聞いてください、  ルミナスで『香水』」  3人の声が揃う。  この店内放送、どこで収録したんだろう。  今はきっと、見る景色だって違う。  新曲が始まった。  僕の好きな声が、いつもより優しい口調で、曲を奏でだす。  ああ、これはバラードだ。  歌詞を書き留めるように頭の中で文字に起こす。曲が進むにつれ、胸が締めつけられる。  に気づいた時、僕は息苦しさすら感じていた。  もっと聴いていたい、だけど、もう聴きたくない。  矛盾する感情。曲が終わった途端、僕は何も買わずにコンビニを出た。  歩調がだんだんと速くなり――やがて、駆け出す。
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