30人が本棚に入れています
本棚に追加
君を想う
走る僕を、通行人が避けていく。
鍵を開けるのももどかしく自宅に入ると、もう限界だった。
「うっ、うわぁあ……」
ぱた、ぱたと涙が床に落ちる。
苦しい。
好きなのに、好きだから、離れるしかなくて。
あの香水も、脱退した夜に捨てた。
そんなことも知らないだろ。
暗い部屋で、自分の苦しさを吐き出すように泣く。それしかできない。
それしかできない奴なのに。
なんで僕のことを歌ってくれるんだ。
絶対に届かないのに、自分の感情だけでこんなに思い焦がれて、馬鹿みたいだ。
「共に春を」と歌う声が頭にリフレインする。
トモ、と僕を呼ぶ声がよみがえる。
最初のコメントを投稿しよう!