君を想う

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君を想う

 走る僕を、通行人が避けていく。  鍵を開けるのももどかしく自宅に入ると、もう限界だった。 「うっ、うわぁあ……」  ぱた、ぱたと涙が床に落ちる。  苦しい。  好きなのに、好きだから、離れるしかなくて。  あの香水も、脱退した夜に捨てた。  そんなことも知らないだろ。  暗い部屋で、自分の苦しさを吐き出すように泣く。それしかできない。  それしかできない奴なのに。  なんで僕のことを歌ってくれるんだ。  絶対に届かないのに、自分の感情だけでこんなに思い焦がれて、馬鹿みたいだ。 「共に春を」と歌う声が頭にリフレインする。  トモ、と僕を呼ぶ声がよみがえる。
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