君を想う

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 外がすっかり暗い。  泣き疲れた頭がぼうっとする。  よろよろと立ち上がった時、携帯が鳴った。  画面に、後輩の名前。 「もしもし」  涙声を抑えて取り(つくろ)う。 「主任! すみません明日って()いてます?」 「え?」 「急なんですけど、友達が体調崩してライブいけなくなったんです、だから空いてたらどうかなーって」 「他の友達とか」 「いやもう連絡しましたよー! 友達に兄弟、親にまで片っ端まで声かけたのに皆都合悪くて」 「うーん......」  落ち着いた態度を(よそお)ってたけど。  頭は混乱していた。  デビュー前に逃げた奴が、しれっとライブを観に行く?  それは、どうなんだろう。  めちゃくちゃ迷惑をかけたのに。  でも......あれから5年経って、3人は僕の不在なんてもう関係なく成功していて。  だけど、それでのこのこ観に行くのは......いいんだろうか。  行ったって、つらくなるだけかも。  でも、でも、でも。  無言の僕に、後輩は手応えを感じたのか、電話の向こうでライブの魅力を語り続ける。 「新曲もやるらしいんですよ、あの、『香水』」 「え、じゃあ......行くよ」  喜ぶ後輩。  僕は悩んだ割に、あっけなく陥落した自分に驚いていた。  でも、天啓(てんけい)のように感じたんだ。  あの曲を、生で聴きたい、って。
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