30人が本棚に入れています
本棚に追加
ああ、明だ。
歌いながら観客を嬉しそうに見てる。
その動きが、止まった。
僕と目が合う。
ドラマみたいなスローモーション。
もう、見れないと思っていた笑顔。
その唇が声を出さず「トモ!」と動く。
胸を撃ち抜かれた気がした。
ひどいことをした。合わせる顔がない。
だけど全ての感情を差し置いて、「やっぱり好きだ」と、そう思った。
明は反対側へ走っていった。
興奮した後輩がバンバン背中を叩いてくる。
「ねぇ! 今主任のこと呼びましたよね!?」
痛いよ、という声が聞こえたかどうか。
僕の頬を、わけの分からない涙が伝った。
不思議ともう、苦しくはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!