30人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ!? なんで」
「僕には無理だ、他の奴あたってくれって……すまん、お前がドタバタしてたから遅くなって」
俺は蓮司さんの両肩をつかんだ。
「クッソふざけんなよ!
トモどこだ、俺が直接話す」
「そんな時間ないだろ、夕方には生放送だぞ」
「だってドラムが」
「今回はプロを呼んである。俺と明と雅美の3人でデビューする」
「4人じゃないと意味ねぇよ!」
「明」
蓮司さんが俺の両腕をつかみ、そっと離す。
「明、ルミナスはもう俺達だけのバンドじゃないんだ」
穏やかな声で、子供に言い聞かせるように。
「これは仕事だ。穴は開けられない。わかってるんだろ」
「……くそっ」
「俺達皆、大人にならなきゃいけないんだ、明」
「……わかってる」
昼過ぎ、マネージャーの迎えが来た。後部座席にいつもより余裕があった。窓の外の東京は建物がありすぎて、トモがどこにいるのかわからない。
生放送の段取りを聞きつつ、俺は仲間の不在を噛みしめていた。
そこら中の人間を揺さぶって、トモがいなくなった理由を聞いてまわりたかった。
俺が責め過ぎたのか?
今だったら向き合ってやれるのに、トモはいない。
逃げ出すような奴じゃなかったのに。
トモ、お前になにがあったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!