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「あのさ、曲にしてもいいかな、あいつのこと。
いい曲ができそうなんだ」
蓮司さんは驚いて、しばらく考えた。
「いいけど、マネージャーから言われたこと忘れてないよな」
「うん、オーダー通り、恋愛ソングにするよ」
携帯で時間を見たついでに、写真を見返す。
仁美はすっかり立派なお母さんだ。俺がバンドに没頭できるのも彼女のおかげ。隣には娘が映っている。俺の小さなお姫様。
事務所より世間より、娘が一番俺を大人にしてくれた。生まれた時「この子に恥じない男になりたい」と思った。今もだ。
やんちゃだった俺はもういない。
今の俺をトモが見たらびっくりするだろうな。
もう、会えないだろうけど。
蓮司さんが心配そうに俺を見ている。
「戻ろうか」と、笑顔を作る。俺はリーダーの分まで空き缶を捨てにいった。
帰りの車の中で、歌詞とメロディーが頭の中に降ってきた。
軽快な走行音をBGMに、俺は携帯に録り始めた。
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