明、5年後

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「あのさ、曲にしてもいいかな、あいつのこと。  いい曲ができそうなんだ」  蓮司さんは驚いて、しばらく考えた。 「いいけど、マネージャーから言われたこと忘れてないよな」 「うん、オーダー通り、恋愛ソングにするよ」  携帯で時間を見たついでに、写真を見返す。  仁美はすっかり立派なお母さんだ。俺がバンドに没頭できるのも彼女のおかげ。隣には娘が映っている。俺の小さなお姫様。  事務所より世間より、娘が一番俺を大人にしてくれた。生まれた時「この子に恥じない男になりたい」と思った。今もだ。  やんちゃだった俺はもういない。  今の俺をトモが見たらびっくりするだろうな。  もう、会えないだろうけど。  蓮司さんが心配そうに俺を見ている。  「戻ろうか」と、笑顔を作る。俺はリーダーの分まで空き缶を捨てにいった。  帰りの車の中で、歌詞とメロディーが頭の中に降ってきた。  軽快な走行音をBGMに、俺は携帯に録り始めた。
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