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「いい加減にしろよ!」  バン!   会議室の壁を叩く。視界の隅の人達が一斉にこっちを見た。  ヤバい、またやらかしてる、俺。  頭にくると周りが見えなくなる。蓮司(れんじ)さんによくたしなめられるのに、ガキみたいな性格が直らなくて嫌になる。 「帰ったら話そう、な?」  どうにか仁美(ひとみ)をなだめて通話を切った。  ここは大手芸能事務所。俺がボーカルのバンド「ルミナス」はデビュー前の打ち合わせ中だ。  軽く頭を下げて俺は席に戻る。 「(あきら)くーん、大丈夫?」  プロデューサーのおっさん声に、場の緊張が()ける。 「あ、はい、すみません」  「ん、じゃあ続きね。この曲の再生回数も上がってるから、間を開けずにこっちもプッシュしたいんだ」 「そうですね。俺らも一発屋とか嫌なんで」  リーダーの蓮司(れんじ)さんが大人の対応を見せ、はは、とさざ波みたいに笑いが起こる。  事務所は俺のアイドルみたいな顔と、低音ボイスの激しい曲、そのギャップを全面に押し出そうとしている。音楽だけで勝負したかったけど、顔出ししたデビュー前の広告は確かに話題になっていた。 「忙しくなるから覚悟してね」とおっさんがウィンクする。 「うっす……じゃなかった、はい」  また笑い声が起こった。  ああ、イライラする。
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