⑤はながさく◯

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⑤はながさく◯

 どんなに困難な夜を迎えても、それでも朝はやってくる。  たっぷりと睡眠をとった朝、いつものように母親の声で目覚めた俺は、のっそりと起き上がった。  十分に寝たくせに、まだ眠気が残っていて、おおあくびしながらベッドから出ると、鏡にいつもの間抜けな俺の姿が映った。  心なしか目元は黒くて、垂れ下がって見えるし、また丸くてフサフサの耳がぴょこんと頭に生えていた。  ああ、今日も昨日と変わらない。  でも変わったこともある。  彼の言葉を借りるなら、荒れ狂う混乱の嵐に巻き込まれた。 「もー、学ったらその耳……」 「おはよう、もういいんだ。朝はこうなっちゃうから放っておいて」 「まぁ、反抗期ね」  食卓につくと小言を言われるのはもう慣れた。  こっちはそれどころじゃないんだと思いながら、目玉焼きに醤油をかけた。  先に食べ終わっていた父親がテレビをつけると、朝のニュースが流れてきた。 『今日の獣人占いでーす。今日の一位はヒョウのアナタ。思いがけない出会いが、今まで目もくれなかった小さなものも、ちゃんとよく見てみて。ラッキーアイテムは……』  ご飯をかっ込みながら、こっちに来てまで占いかよとウンザリした気持ちになった。  父親は無関心な様子でコーヒーを飲んでいるが、母親は目を輝かせて家族のどうぶつさんが呼ばれるのを待っていた。 「あら、パパ、しばらく恋愛運最高だって。リッチなカレと出会えちゃうかも、最高の相性だから見つけたら絶対に逃さないで。ラッキーアイテムは薔薇の花、ですって! きゃーっロマンティック!」  結婚している身で何の出会いなのかと、俺と父親が冷めた目で母親を見ていると、ひとりで興奮していた母は、やっと気がついたのかゴホンと咳払いして俺を見てきた。 「出会いと言えば、学はどうなのよ。そろそろ恋人の一人くらい。うちに連れてきたら?」
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