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だが、今は少し状況が違うのだ。
急に押し黙って黙々と食べ始めた俺のことを、両親は不思議そうな目で見ていた。
『ごめんなさーい、今日の最下位はタヌキのアナタ。争いごとに巻き込まれて大ピンチに! でもそんなアナタに……』
テレビからダメ押しのような一発が飛んできて、思いっきりヘコみながら味噌汁を流し込んだ。
キョロキョロと辺りを見回して、たどり着いたのは図書館の横をすり抜けていくとある物置用の倉庫。
こんなところにあるなんて誰も知らないだろうというこの倉庫は、中に何も入っておらず、以前から亜蘭が休憩場所として使っていたらしい。
一年生の亜蘭が、なぜそんな場所を知っているのかと言えば、この大学自体が白馬グループの経営している持ち物なので、亜蘭は入学前から建物全体のことを熟知していたそうだ。
そんなことなので、当然倉庫の鍵も持っていたのだが、しつこいファンの女の子達に特定されそうになってあの日は困っていたそうだ。
そして、フラフラ歩いてきた俺と出会った。
その俺はなぜか、不眠症の亜蘭の枕として気に入られてしまい、コソコソ隠れながら、毎回この倉庫までやって来ることになってしまった。
ドアノブを回すとカチャリという音がして、ドアが開いた。
鍵がかかっていない、ということは先に来ているということだ。
「学! 今日も来てくれてありがとう」
大歓迎という熱いオーラを受けて、入ったばかりの倉庫から押し出されそうになってしまう。
キラキラした笑顔で手を振りながら、俺を迎えてくれたのは白馬亜蘭。
ヒト型であって人でないような、ユニコーンの神獣人。
タヌキの獣人である俺とは、属性も生まれも立場も何もかも、大違いの眩しすぎる男だ。
亜蘭は倉庫の中にあるお手製の簡易ベッドをポンポンと叩いて、早速お願いしますという顔で俺を座るように促してきた。
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