⑥あんらっきー◯

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 ひとりで唸っていると、窓の外に見える中庭の広場に人が立っているのが見えた。  ただ立っているなら何とも思わないが、二人の人間が対峙するように立っていて、緊張感のある雰囲気が窓越しにも伝わってきた。 「あっ……あれは……」  その一人は、背が高く艶のある黒髪に、鋭い目つきに大きな口で、遠目に見ても同じ学科の兵藤だと分かった。  となるともう一人は、こちらも背が高く茶色い長髪でいかにも悪い顔をしていた。  兵藤とよく縄張り争いをしているという噂の、二年の大神とかいう先輩かもしれない。  肉食獣人達は争い好きで、何かある度に取っ組み合ったり、殴り合ったりしていた。  やだやだと思いながら俺は顔を顰めた。  学内では争いごとは禁止だが、習性というやつなのか、教員の目の届かないところでぶつかり合いを続けている。  さっさと移動しようと思いながら、安全な場所にいるからか、緊迫した様子についつい見入ってしまった。  二人は拳を突き上げて、ニヤリと笑った後、思った通りに殴り合いを始めた。  お互い譲らずのパンチの応酬にもっと目が離せなくなった。  隙をついてサッと近づき、頭突きくらわせたのは兵藤だ。  大神がクラリと揺れたところを腹に一発入れて地面に転がした。  喧嘩慣れしているのは兵藤の方らしい。  タイマン勝負では兵藤の方が有利だと見えたその時、校舎の陰から次々と男達が現れた。  大神の後ろに付いたので、どうやら大神の仲間のようだ。  大神はその名の通り、オオカミ獣人だ。仲間と連携して悪いことをやっていると聞いたので、もしかしたら兵藤を騙してタイマン勝負に持ち込んだのかもしれない。  やはり兵藤は、騙されたというような苦い顔をしていた。  喧嘩では名前が知れている兵藤だが、さすがにこの人数相手にしてはお手上げだろう。  じりじりと追い詰められた兵藤は、くるっと向きを変えて、校舎に向かって走ってきた。  校舎といえば、俺がいる場所なので焦ったが、ここは二階なので大丈夫だろうと俺はまだ見物気分だった。  ところがなんと、兵藤はものすごい跳躍力で飛び上がって、俺の近くの開いている窓から中へ飛び込んできた。
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