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「お前、良いやつだな。俺は兵藤黒、お前は?」
「……落合学」
「おう、落合。この借りは必ず返すぜ」
「いいよ。遠慮しとく」
「遠慮すんなって。女でも男でも気に入ったヤツがいたら言えよ。捕まえてきてやるから」
そんな狩りでもするように言われても困る。
やめてくれと俺は小さく悲鳴を上げて首を振った。
こんな重すぎるお荷物はさっさと置いて行こう。
階段を降りて、救護室の前まで兵藤を連れてきた。
ドアの前に兵藤を下ろして、中に誰かいるか分からないがノックしようしたところで、ガサっと足音が聞こえて、後ろの方から凍りつくような恐ろしい気配がした。
「おやおや、弱虫ニャンコちゃん。怪我をしたみたいだね。ずいぶんと手間を取らせてくれた」
「………クソ犬がっ、キモいんだよ!」
ゲラゲラとバカにしたような聞こえてきて、これは間違いなく大神だろうと振り向かなくても気がついた。
最初に追いかけて来たヤツらは別の方向へ行ったはずだから、二手に分かれたようだ。
リーダーの大神の登場に、どうにかできないかと救護室のドアを回したが、鍵がかかっていて中には誰もいないようだった。
大学の救護室は簡易的なもので、いつも誰かが常駐しているわけではない。
全く何もかもツイていない。
ここで俺は今朝の占いを思い出した。
タヌキの俺は、最下位で争いごとに巻き込まれる。
まさに今その状況だと頭がクラリとした。
「おや、オマケがいるね。いつもの仲間じゃない。ああ、草食系か。さすがネコだ、雑草とも仲良しとはね」
雑草とはひどい言い方だ。
恐る恐る振り返ると、やはりそこには茶髪で背中まで伸びた長い髪の、大神が立っていて、後ろに何人か仲間を引き連れていた。
「へぇ、ちょっと地味だけど、よく見れば可愛いじゃないか。ネズミ? 何でもいいけど、お腹空かせていたんだよね」
矛先が俺に向けられてビクッと体を揺らした。
まさか本当に食べられてしまうのか、それとも他の意味なのか冗談なのかも、コイツらの常識が分からない。
追い詰められた俺は必死に考えを巡らせた。
どうしよう。
どう切り抜ければいいんだ!
占いなんて信じない。
信じないけど……
残念なアナタへのラッキーへのカギは。
それは確か……
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