⑦わるいこ◯

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 目に入ったのは、大神のザックリ開いたシャツから見える広い胸だが、そんなことは絶対にありえないと身を震わせた。 「う……うそ、や……それは、無理っ、なんで胸!? 全然ラッキーじゃないーーー!」 「ごちゃごちゃうるせーな、少し黙れ」  終わった。  俺の何かが、今日確実に終わる。  世界が真っ白に染まりかけていた時、視界の端に反対側の廊下を歩いている亜蘭の姿が見えた。  まるでスローモーションのように、日差しを浴びながらキラキラと輝いて見えてしまい、まさしく天使がやって来たのだと俺はピョンっと飛び跳ねた。 「亜蘭ーーー!」  力いっぱい叫ぶと、通り過ぎようとしていた亜蘭が足を止めて、くるっとこちらに向かって振り返った。  この中で飛び込む胸があるとしたら、亜蘭の胸しかありえない。  しかし、一瞬迷ったのはある。  俺と亜蘭は昼寝の時に枕代わりになるだけの関係。  亜蘭からしたら、そのくらいの相手を助けるために、面倒なことに巻き込まれたくないと思うかもしれない。  状況を察しても、俺が近づいたら逃げられる可能性が…… 『迷わず、胸に飛び込むこと……』  あーもう! やるしかない!  走り出した俺は、スライディングして大神の股下をすり抜けて、勢いのまま立ち上がって亜蘭に向かって走り出した。  運動は苦手だが、逃げ足スキルはかなり優秀だ。  走ってくる俺を見て、亜蘭は目を見開いていた。  そりゃそうだ。  耳を出した、こちらの常識では、恥ずかしい格好をしたヤツが走ってくるんだから……  拒絶されたらどうしようかと不安しかなかった。  亜蘭は途中で後ろにいるヤバいやつらに気がついたのか、ニコッと笑って手を広げてくれた。  やばいっ、やっぱり亜蘭は天使だ。  こんな俺のことを、助けてくれるなんて……  俺は亜蘭の胸に向かって飛び込んだ。
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